2023年3月17日 西日本地区料理講習会 開催報告
2023.3.17
3月17日に辻調理師専門学校にて藤本 義章シェフ(トック・ブランシュ国際倶楽部会員/レストラン「ディファランス」オーナーシェフ)を講師に迎え西日本地区の料理講習会が開催されました。以下、レポートにまとめていただきましたのでご報告いたします。
諸先輩を前に堂々と説明をする姿、さすが9年連続ミシュラン一つ星のシェフ。
一皿一皿のコンセプトをわかりやすく説明されていました。気づいたのは3品に共通するのは春を告げる自然の苦み。クレソンあり、新玉葱あり、八朔の皮あり、黒ビールのブリオッシュあり、フキノトウあり、出てくる出てくるアイデアの泉。
さて、料理ですが、1品目が天然鱒を使用した低温料理、芯温41℃にこだわりがあり、見た目はレア、食べると火が通っている微妙なキュイッソン。燻製の香りを付けたバター、生クリーム、牛乳でアングレーズを作ってパコジェットでアイスクリームにし、ソース代わりにした面白い組み合わせ。自家製生ハムの塩味、新玉葱のマリネのシャキッとした食感と若干の苦み、レモンの酸味、クレソンのほろ苦さが絶妙な組み合わせ。
2品目は季節の豆たちと八朔の取り合わせ。土台に冷たいフヌイユ風味のブランマンジェを置き、その上に八朔の皮で作った温かいバターで和えた豆たちを乗せ、ほぐした八朔の果肉とハーブのサラダを飾り、塩ヨーグルトを散らし、ハーブオイルとヨーグルトのソースをかける。八朔の甘酸っぱさと皮の苦味と渋み、塩ヨーグルトの塩味と旨味、黒ビールで作ったブリオッシュの香りと苦みが重層的に組み合わされていました。
3品目は子羊。山菜の苦みはダイレクトに表現せずにクレープや帆立貝と干し舞茸のフリカッセと合わせてほのかに忍ばせる。子羊のノワはロティし、足りない香ばしさをフキノトウの素揚げで補い、かぶりを使ってスパイシーなチョリソーに仕立て、スパイスを利かせたクレープでサンドした帆立貝、干し舞茸、山菜のフリカッセを付け合わせにしたエスニックな味付けのパンチのある一皿。素材を無駄なく料理することを信条とするシェフの自信作。
今回、試食は全てレシピと同じポーションで供され、様々な味の変化を感じることができる満足できる量でした。また、話を聞いていて気になったのは素材に向き合う姿、どこまで生かせるか、どこまで使えるか。とことん使う、捨てるものは最小限に。まるでSDGsそのまま。開業からずっと続けているので、世間で大きな話題になるまで自分でも気づかなかったそうです。
例えば鱒の低温調理のソースは燻製風味のアイスクリームだが、卵白を有効活用して塩メレンゲに仕立て、食感と塩味、甘みのアクセントに。季節の豆たちと八朔では、皮を捨てずに豆を和えるソースとして。子羊のかぶりはチョリソー仕立てにと使い方も様々。
ほかに藤本シェフの大事にしていることが、まだ、ありました。目の前にある材料でフランス料理を作る。あれがないと作れない、これがないとだめだとは絶対に言わない。瓶や缶を開けることを潔しとせずオリーブやケイパー、トマトペーストなどは自分の味に合わせるため自家製にする。
素材のどこを切り取って、どこにフォーカスして料理に仕立てるか、素材と向き合って一皿を組み立てていることがよくわかる講習会でした。
(テキスト:西日本地区 特別料理講習会 実行委員 Y.K)
鱒の低温調理と自家製の生ハム 燻製の香り
季節の豆たちと八朔、ヨーグルトのサラダ仕立て
仔羊のロティと仔羊のチョリソー仕立て 帆立貝と山菜のフリカッセと共に
※こちらの講習会の動画をYouTubeアップしました。ぜひご覧ください。
鱒の低温調理と自家製の生ハム 燻製の香り
季節の豆たちと八朔、ヨーグルトのサラダ仕立て
仔羊のロティと仔羊のチョリソー仕立て 帆立貝と山菜のフリカッセと共に