2023年9月5日 西日本地区料理講習会 開催報告

2023.9.5

9月5日に京都調理師専門学校にて小楠 修シェフ(トック・ブランシュ国際倶楽部会員/ルポンドシエル株式会社 総料理長)を講師に迎え西日本地区の料理講習会が開催されました。以下、レポートにまとめていただきましたのでご報告いたします。

グラン・ヴェフール、ギィ・ラソゼのエスプリを活かしてルポンドシェル50周年の歴史に新たな一歩を踏み出した小楠シェフ。94年の入社以来、目指してきたのは素材を見極めること、素材の持ち味を生かす調理法を組み合わせること。そして最良の状態で調理すること。この日の講習会では季節を先取りした秋冬の料理3品を披露していただきました。

先ず一品目はクリスマスにピッタリなブルターニュ産のオマール海老で講習会の幕開けを華やかに飾ります。
オマール海老と根セロリの組みあわせは絶妙。ジュ・ドゥ・オマールを添えるだけではなく、パンス(はさみ)やクー(尾の身)の切れ端もしっかり味付けして小さなサラダ風に仕立てます。根セロリとリンゴをレムラード風のエスプーマにしてアクセントに使い、隠し味はタバスコでした。

二品目はこれから美味しくなる平目を使い、身質に合わせて低温調理でしっとりと仕上げます。シェフ曰く、「今は低温調理が流行っているが、肉でも魚でも加熱後にかえって固くなるものもある。特に魚は鮮度と身質の変化に注意が必要で、当店では2種類以上の魚を熟成させながら筋繊維の緩み具合と旨味の乗り具合をチェックしてベストになったものから営業に回している。」とのこと、この辺がシェフのこだわりと店のポリシーだと感じました。ソースはレシチンを加えてエムリショネした泡状。ベースがしっかりとった浅利のジュ、白しめじをフォンブランでポシェしたキュイッソンなので、コハク酸、グアニル酸、イノシン酸の旨味の3重奏、レモンオイルも効いていて軽いのにとにかく美味い。平目の淡白で上品な味を引き立てていました。

3品目はメイン。前回3月17日の藤本義章シェフが子羊、前々回の22年8月2日の中埜智史シェフがシャラン産鴨でしたので、悩んだ末、鳩を使うことに。ローストしてジュを添えるのは想定内。
食感の面白さと味の変化でフランボワーズ風味のクラクラン(アーモンドの糖衣がけ)を使いました。
ジュの骨格はエーグル・ドゥ。血の気のある鳩肉にスパイスを使って重くならないように仕立てます。どこまでもお客様のことを考えて皿数を重ねても飽きずに食べきれるようにとの配慮が滲んでいます。また、ローストした家禽のお約束、キュイッス(腿肉)はグリエせず、皮を取って細かく刻みカイエットに仕立てました。シブール(青ネギ)のピュレをグラッセして食べやすく、見た目もかわいく緑色が鮮やかです。試食は何と1人1/2羽、レストランで食べる普通のポーションでした。

Homard bleu tiède, espuma de rémoulade céleri-rave et pommes, jus de homard réduit
オマールブルーのティエッド 根セロリと林檎のレムラードソースのエスプーマ 煮詰めたオマールのジュ
Filet de barbue cuit à la vapeur, purée d’oignons et ciboules, tartare de coquilles Saint-Jacques, émulsion de palourde
平目のヴァプール 玉葱とシブールのピュレ 帆立貝のタルタル 浅利のエマルジョン
Pigeon rôti au craquelins parfumés aux framboises et aux amandes, avec son jus aux épices, caillette verte
フランボワーズ薫るクラクランを纏った鳩のロースト スパイス風味のジュ 緑のカイエット

3品のデモンストレーションで感じたのは小楠シェフの料理は、技法はフランス料理の基本に忠実に、そして乳脂肪を抑えて軽く仕上げ、ソースはクラシックでも重くならないように、付け合わせはちょっとした遊び心を入れて、珍しい食材を食べやすい形でさりげなく。
鳩の付け合わせのパネ(白にんじん) が秀逸。低温でローストして中央のしっかりした部分はヘーゼルナッツオイルでソテー、両端はバターや生クリームではなく、ヘーゼルナッツオイルを加えて滑らかな風味豊かなピュレにしていました。

(テキスト:西日本地区 料理講習会実行委員 Y.K)