2024年8月26日 東日本地区料理講習会 開催報告
2024.8.26
8月26日に東京調理製菓専門学校にて吉野 建シェフ(トック・ブランシュ国際倶楽部 会員/ステラマリス ジャポン株式会社 社長)を講師に迎え、東日本地区の料理講習会を行いました。当日はフランス料理界の巨匠・吉野シェフによる講習ということで、満員御礼の100名以上の方にご参加いただき盛大に開催されました。
講習メニューは古典料理を得意とする吉野シェフらしいものばかりで、パリで長年星付きレストランを守り続け、フランス人と戦ってきた技術や知識を感じました。会場にはたくさんの著書や、ロブション氏のテレビ番組「Cuisinez comme un grand chef」に出演された時のDVDを持ってきてくださり、待ち時間にスクリーンで流すと、「おお!若い!」という声があちこちから聞こえてきました。当日は、そのテレビ番組に出演したときのコックコートを着用され、おそらく日本人シェフでは持っている方はいないだろうとのことでした。
パリで吉野シェフが命を注ぐほど真剣に向き合ったのはジビエ料理でした。特に、フランス人にとっても最難関である「Lièvre à la royale」は太陽王ルイ14世のために創作されたと言われ、何世紀も前の伝統のジビエ料理ですが、吉野シェフは2000年に「クラブ・ド・リエーヴル・ア・ラ・ロワイヤル」で名だたるフランス人シェフよりも高得点を叩き出して優勝し、「東洋人がフランス人より見事に作った!」と新聞やメディアを賑わせた程。その優勝トロフィー(かわいいウサギでした)も持参され、紹介いただきました。
前書きが長くなりましたが、講習1品目は吉野シェフのパリ時代からのスペシャリテ「サーモンの ミ・キュイ ステラ・マリス風」。マリネしたサーモンを桜のスモークウッドで燻製し、ミ・キュイの絶妙な状態で仕上げる技術を目の前で披露し、20年以上前から作り続けていながらも、古さを感じさせない料理でした。
2品目は、「テット・ド・コション ソース・トルチュ」。本来はヴォー(子牛)の頭を使った料理ですが、日本では手に入らないためコション(豚)で再現したもの。大きな豚の頭が会場の入り口にディスプレイされ、みなさん大興奮でした。講習では頭蓋骨を割り、頭とタンを茹で、脳みそを取り出してムニエルするまでの過程をしっかり見せてもらい、最近のレストランでは滅多にお目にかかることもない素材を拝む貴重な機会でした。また、鶏のトサカ、エピストルチューを使ったソース・トルチュを作る料理人も少なくなってきている中、後世に残して行って欲しいと感じました。
3品目の「仔ウサギのトゥールト サリエットの香り」は、ラプローの肉と内臓を使った料理で、白い肉と赤い内蔵のコントラストが美しく仕上がり、パイの焼き加減も完璧に披露いただきました。リエーブルを捌いて、レバー、腎臓、もも肉、ロース、フィレに分けます。吉野シェフのこだわりは、焼き上がりを考え、底のパイはタルト型にあらかじめ空焼きしておき、その中にウサギとムース、内臓を詰め、フイユタージュで包むという手法でした。骨はソース用にカットする様子を受講者の皆さんが熱心に勉強していました。
この講習会を通して、フランスの古典料理、伝統素材、歴史を追求されてきた吉野シェフならではのテクニックと、独自の感性が加えられた力強い料理の数々を学ぶことができ、たいへん有意義な時間でした。
施設を提供いただきました東京調理製菓専門学校様には毎回たいへんお世話になり、心より感謝申し上げます。当日は朝早くから、吉野シェフのサポートのため、和歌山、大阪、福井から駆けつけていただいたスタッフの皆様、ありがとうございました。齋藤会長、サポートいただいた理事、委員の皆様、お疲れ様でした。
(レポート:事務局長 中宇袮 満也)
講習料理名
サーモンのミキュイ ステラ・マリス風
テット・ド・コション ソース・トルチュ
仔ウサギのトゥールト サリエットの香り