2025年9月9日 西日本地区料理講習会 開催報告

2025.9.9

9月9日に滝本将博シェフ(トック・ブランシュ国際倶楽部 会員/La Biographie・・・ オーナーシェフ)を迎えて京都調理師専門学校でトックブランシュ国際俱楽部 特別料理講習会が行われました。
以下の3品を実演いただきました。各料理のコメントと総評を西日本地区委員の中川 佳さん(京都調理師専門学校 西洋料理上級科 学科長)にレポートいただきました。

<講師プロフィール>
京都のレストラン、ホテルにて料理を学ぶ。25歳で渡欧、「スイスモントルーパレス」「ホテルインターナショナル」を皮切りに「ミリオン」アルベールヴィル「アルページュ」パリでの修業。
帰国後市内のホテルで料理長を務める。
関西版ミシュランで初年度より京都のフランス料理としては唯一星を獲得。
その後2011年に株式会社を立ち上げ独立し「La Biographie・・・」開業。
2017年2018年とLa Liste に選出。2021年下立売に移転。
2023年農林水産省「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞。
ミシュランの星を維持し続け現在に至る。

当日は以下の3品を実演、試食していただきました。

【料理名】
Chaud-froid d’oeuf au sirop d’érable et vinaigre de xérès Le microcosme des goûts
卵のショーフロア メープルシロップとシェリーヴィネガー 味の小宇宙

【内容及び感想】
フランス3つ星レストラン アルページュにて修行中に作られており、ご自身のお店でもアランパッサール氏へのオマージュとして作り続けられている滝本シェフのスペシャリテの一品。
滝本シェフは「卵は神秘的な食材だと思います」と一言。五味全てと合わせることができ色々な表情を見せてくれる食材であるとのこと。卵黄と生クリームのコクに、シェリーヴィネガーの酸味、シブレットの苦み、メープルシロップの甘み、キャトルエピスと胡椒の香り、フルールドセルの塩味などどれか一つの味を抜いても成り立たない完璧な一体感が味わえる素晴らしい一皿であった。卵の火入れに関しても「卵黄自体が固まろうという意識が出てきた頃が見極め」と食材の非常に細かな変化を見極めてくつられていることが伝わる内容であった。

【料理名】
Ormeau aux épices, Tartare de calamar au WASABI et caviar royal
Essence supérieure en fine gélée
鮑 マドラス スパイス 剣先烏賊と山葵のタルタル ロイヤル キャヴィア
黄金プレミアム エッセンス ジュレ

【内容及び感想】
これまでは鮑を一度柔らかく煮てから焼くということをしていたが、鮑の美味しさや香りが抜けているように感じていたことから、神経締めを取り入れたことで、煮た柔らかさではなく、生の硬さでもない、自身が理想としていた食感が得られたとのこと。神経締めをした瞬間は身がギュッと締まるが少しおいておくと締まりが緩み良い硬さになる。また、剣先烏賊にトレハロースを使用するのは食材からの離水を抑えて、保湿性を高めることができるという一面から。鮑に使用するトレハロースは冷製で提供するにあたり、焼いたときのカラメル化した状態を表現したいため。砂糖では甘さが強すぎるため、トレハロースでその役割を果たしているとのことであった。
手間暇かけて作られた、プレミアムエッセンスジュレとイカの甘み、鮑の触感と香り、レモンとディルの清涼感、ワサビのアクセントなど全てのバランスが上手く合わさった一皿であった。

【料理名】
Tronçon d’agneau et foie gras en habit vert, Un jus léger Caviar d’aubergine aux kochias
仔羊背肉 トロンソンとフォアグラ アビヴェール 軽いジュ 茄子ととんぶりのキャヴィア風

【内容及び感想】
今回はトップトレーディング様より協賛いただいた、「オーストラリア産 ソルトブッシュ オーガニック ラム」を使用された一品。ソルトブッシュとは砂漠や塩分を多く含む土地に見られる低木の植物であり、それを主に食べて育ったオーガニックラムであった。
滝本シェフの「ジュ」へのこだわりが伝わる講習内容であり、ミルポワを炒める際の油脂の量は極力減らし、鍋底が焦げ付きそうになる前に少量の水を足して炒めるといった方法をとり、ジュには油脂分をできる限り含ませないでクリアなジュをとるという方法であった。そうすることで、香りを濁す成分がなくなり、野菜、仔羊、香草全ての香りがバランスよく感じる軽やかでありながらも風味とコクが感じられるジュとなっていた。受講者へは、ジュを取る際の、筋肉やミルポワの火の入り方までも詳しく説明されていた。86℃で約10分間の真空調理も非常にきれいなキュイソンに仕上がっており、ジュとのバランスが素晴らしい一皿であった。

【全体の感想】
滝本シェフのエピスや香草、塩の使い方が、主材料に「添える」といった表現で表されており、口にした際に「心地よさ」を感じる料理となっていた。料理人として素材を大切にし、最大限に素材を引き出すためのこだわりが詰まった3品であった。一品一品に対する、ご自身の考えをお伝えいただき、料理に対しての向き合い方が伝わる大変すばらしい講習会であった。

レポート:西日本地区委員 中川 佳(京都調理師専門学校 西洋料理上級科 学科長)