2026年3月11日 西日本地区料理講習会 開催報告

2026.3.11

3月11日に大阪あべの辻󠄀調理師専門学校にて志摩観光ホテル総料理長:樋口宏江氏(トック・ブランシュ国際倶楽部 会員)を講師に迎え西日本地区の料理講習会が開催されました。当日は以下の3品を実演、試食していただきました。

会員の大西 章仁さん(辻調理師専門学校 西洋料理教授)に当日のレポートを作成していただきました。

鮑のテリーヌ
Terrine ďormeau


白身魚とホタテ貝で仕立てた繊細な魚のムースに、3時間かけて柔らかく仕上げた鮑のみじん切りをたっぷりと混ぜ込んだ、贅沢な魚介のテリーヌ。
ピスタチオの心地よい食感とフィーヌゼルブの香りが重なり、フランス料理の王道を感じさせる一品です。
地元で栽培される原木椎茸やエリンギは、軽くソテーしてから程よい酸味のマリネに仕立て、テリーヌの旨味を引き立てる付け合わせとして添えられていました。

伊勢海老クリームスープ
Bisque de langouste


伊勢海老のクリームスープは、志摩観光ホテルを象徴する伝統的スペシャリテであり、“海の幸フランス料理” を代表する一品です。
伊勢海老やヨシエビ(葦海老)を惜しみなく使い、香味野菜はあえて控えめにすることで、甲殻類そのものの濃厚な風味が前面に出るよう仕上げられています。
2016年の伊勢志摩サミットでも提供されたように、仕上げは牛乳を泡立てたカプチーノ仕立て。そこに内子パウダーと、ホテル自家菜園で育てたセルフィーユを添えて、華やかなアクセントを加えています。
見た目の軽やかさとは裏腹に、味わいは豊かで奥行きがあり、海の旨味が凝縮した贅沢なスープです。

鹿肉マリネのソテー 赤ワインソース
Sauté de chevreuil mariné, sauce au vin rouge


和食の鴨ロースの技法を応用し、鹿肉の旨味を最大限に引き出した一品です。
表面を香ばしく焼き固めた鹿ロースを、赤ワイン・醤油・はちみつなどを合わせたマリネ液に浸し、その後じっくりと低温調理することで、しっとりとなめらかな火入れを実現。提供直前にはバターで軽くソテーし、香りと奥行きをさらに加えています。
ソースは鹿の骨やすじをオーブンでしっかりとローストし、香味野菜、トマト、赤ワイン、水を加えて長時間煮詰め、旨味を凝縮させた濃厚な赤ワインソース。鹿肉の深い味わいに寄り添い、料理全体の骨格を形成する力強い仕上がりです。
付け合わせには、県内産の蓮根やラディッシュのソテー、三重なばなのバター和えなど、素材本来の個性を生かしたシンプルな調理を施した野菜を添えました。これらの瑞々しい風味が鹿肉の豊かな旨味と見事に調和し、皿全体の味わいに美しいバランスをもたらしています。

全体を通して感じたのは、高橋忠之氏の時代から受け継がれてきた味と精神を、樋口宏江シェフが確かな技術と感性で現代へと昇華しているという点です。そこには、地元の生産者と料理人が共に築き上げる、持続可能なフランス料理の姿が明確に表れていました。
食材と向き合う姿勢や、生産者への敬意は、講習会に参加した私たちにも強く伝わってきたように思います。
フランス料理の伝統を守りながら、未来へとつなぐ新たな表現を探求する——
今回の講習会は、そのようなテーマ性を鮮明に示してくれた貴重な時間でした。

レポート:トック・ブランシュ国際俱楽部会員 大西 章仁(辻調理師専門学校 西洋料理教授)

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